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「正直、アイツをそうやって見た事なかったな」
「それって好きな異性として?」
「あぁ」
「兄さんらしいと言えば兄さんらしいね」
手を口元に当て、クスリと微笑みながら久遠ちゃんは飛鳥のベッドに座る。
俺もベッドの上に座って天井を見上げた。
「ねぇ、兄さん」
「何だ?」
「姉さんがさ、もし、姉さんが還ってきたらどうする?」
還る――、か。
普通死んだ人間は還って来ない。
それなのに還って来るかもしれないと信じている人間だっているのだ。
俺だってその1人に過ぎない。
「そうだな……また、バカすると思うな」
「……昔と変わらないね」
「そう、だな――」
その会話を最後に、お互いは黙り込んで何もない天井を見上げていたのだった。
◇
夢を見た。
潮風が気持ちいい場所。
そんな場所に俺がいた。
海岸線に沿うよう歩くが、日本、いや、世界のどこでもない、そんな感覚が俺を襲う。
何故こんな感覚に教われるか――。
簡単だ。
俺『しか』いないから。
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