2606人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
半ば諦めて俺は話を続ける。
「それより久遠ちゃん、新学期始まったら去年みたいにまた教室まで送った方が良いかな?」
「何でそんな事聞くの?」
「いや、俺、本校の生徒になるだろ?今まで同じ教室棟だったけど新学期から離れた所になるしさ」
話の流れで気付いたかと思うが、俺や久遠ちゃん、美幸が通う萩原学園は附属と本校から成り立っている。
俺の日課は久遠ちゃんを教室まで送り届けてから自分の教室に向かうのだが、今年からはその距離が倍増するのだ。
去年までは久遠ちゃんのクラスの下だったから階段を降りれば済む話だった。
でも、今年からは送った後に附属と本校を通じている渡り廊下を渡って階段を上らなければならない。
正直面倒だ。
けど、妹みたいな存在だからちゃんと兄らしくしないとという心になってしまう。
「離れたって……別に歩いて何分もかかるような距離じゃないから今年も頼むよ、兄さん」
パチッと軽くウインクして、手を繋ぐ久遠ちゃん。
この歳になると妹みたいな久遠ちゃんのちょっとした行動にドキリとさせられる。
「ど、どこ行くんだ?」
「姉さんの部屋!」
笑いながら久遠ちゃんはそう答えた。
姉さん……飛鳥か。
最初のコメントを投稿しよう!