第二話 パーティ

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「お嬢様?」 「(あー………この後色々口説こうとしてたのに。 我慢できなかったなんて、 我ながら間抜けね……… まあいいか。)」 咳払い一つ。 大きくないそれは闇に消えた。 「折角なんだし、良いでしょ?」 「そんな………私はメイドですよ?」 「メイドがドレスを着て 酒を飲んだ挙句、 屋上でサボってたりするものか。」 それでも尚複雑な表情をしている咲夜を見て、 レミリアは手を離した。 咲夜のちょっと残念そうな顔を ちらりと、しかししっかりと見て レミリアは咲夜に背を向け、 月を仰ぎ見た。 「誰も来やしないさ、 一人一人丁寧にここに来る運命を消してきたんだから」 くるり、くるり、たたん。 軽い足取りで咲夜の前に。 軽い笑みを浮かべ、 目を合わせる。 言葉は要らないけれど、 始まりを告げる挨拶くらいは。 「Shall we dance?」 「………Yes.」 さらさら、たたん。 胸が高ぶる。 ふわふわ、くるん。 体が熱を帯びる。 紅い瞳と蒼い瞳が向き合い、 混ざり、溶けていく。 心も共に踊って、 二人きりの舞台は最高潮。 アイコンタクトも無しに ごく自然に合わさる動きが 心地よい。 目線が合う度、笑ってしまう。 可笑しくてたまらないような、 ちょっと恥ずかしいような、 出会った頃のように魅せられて、 闇の中で互いがやけに眩しく感じた。 「ふふ、可笑しいわね。 やめたいって思わないわ」 踊りながら、レミリア。 「そうですね。いつまでも……」 その先は語らない。 彼女のこだわりなのだろう、 とは思っても、 やはり少し鼻につく。 咲夜もぎこちなさは少々あったが 滑らかに、しなやかにレミリアに合わせる。 「咲夜………いつか、貴方が 私に言ってくれたこと、 覚えてる?」 「寝る前に歯を磨く事ですか?」 「竹林の肝試しの後よ。 死ぬまでは一緒に、ってやつ。」 とんでもない間違いをした咲夜に突っ込むのもそこそこに、 レミリアは続けた。
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