1.沙希(さき)

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俺は振り向く。 俺の瞳に映るのは、黒髪の綺麗な少女。 「ねぇ……何処に行くの?」 さっきと同じ声で同じ質問をされる。 「会いに行くんだよ」 そう。 咲の元に…... 俺は前を向く。 見えるのは、綺麗な夜景と美しく輝く月だけだった。 「沙希(さき)」 ――ッ! その言葉に反応して、勢いよく振り返った。 そこにいる少女は、ただ無言で俺を見つめている。 なんで、この女は咲を知っている? 「絢乃 沙希(あやの さき)……私の、名前」 この少女の名前も…... さき…... 俺が、愛した人の名前。 すごい偶然だな。 「そうか。じゃ〓な」 「死ぬの?」 死ぬ……か 「違う。会いに行くんだ」 死ぬんじゃない…... 咲に会いに行くんだ。 「誰に?」 「大切な人に……」 大切な人に会うんだ。 今から…... 目を閉じる。 懐かしい咲の顔が浮かぶ。 俺は、片足を地面から離し体を前に傾ける。 咲……
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