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俺は振り向く。
俺の瞳に映るのは、黒髪の綺麗な少女。
「ねぇ……何処に行くの?」
さっきと同じ声で同じ質問をされる。
「会いに行くんだよ」
そう。
咲の元に…...
俺は前を向く。
見えるのは、綺麗な夜景と美しく輝く月だけだった。
「沙希(さき)」
――ッ!
その言葉に反応して、勢いよく振り返った。
そこにいる少女は、ただ無言で俺を見つめている。
なんで、この女は咲を知っている?
「絢乃 沙希(あやの さき)……私の、名前」
この少女の名前も…...
さき…...
俺が、愛した人の名前。
すごい偶然だな。
「そうか。じゃ〓な」
「死ぬの?」
死ぬ……か
「違う。会いに行くんだ」
死ぬんじゃない…...
咲に会いに行くんだ。
「誰に?」
「大切な人に……」
大切な人に会うんだ。
今から…...
目を閉じる。
懐かしい咲の顔が浮かぶ。
俺は、片足を地面から離し体を前に傾ける。
咲……
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