島と…

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島と…

「…ン…レン!!レーン!!」 その暑苦しい声で気持ち悪く目が覚めた。 「…っ…なんだよ、姉貴」 「イルカだよっ!!野生だよ!!」 「へー、で?」 「で?じゃないよ!!おいで!!」 「はぁー…はいはい」 逆らうと後々面倒だ。 こいつは椿(ツバキ)俺、神田蓮の今年から大学生の姉だ。今、俺は南の小さな島に行くフェリーに乗せられている。理由は父親の仕事だ。姉貴は学校で、母さんは別の仕事だから、俺は親父について行くしかなかった。 それで姉貴が夏休みを利用して俺の引っ越しについてきた。絶対に観光気分だ。親父は先に島で住むところを見つけたらしい。 「ほらっ!!可愛いーっ!!」 たしかに水面にはイルカの群が見える。このフェリーについてきているようだ。ちらっと目をやると水平線に小さな島が見え始めた。俺が中学の残り一年半をくらす島だ。 「わぁぁぁあ!!見えたよ!!レン!!」 姉貴は島を凝視している。俺は足元のイルカを何気なく見ていた。急に水面がキラリと光った気がした。光の悪戯だろうか。俺はすぐに島に視線をうつした。
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