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歪んだ口元から溢れる言葉達は俺を脅えさせるには十分すぎるもので、もう聞きたくなくて耳を塞いだ。
佐久間の唇が動く。
きどうさん、
ああもう、やめてくれ。
こいつは俺まで狂わせる気だろうか。
そんな重たいもの、俺が受け止めれるわけない!
目を閉じると迫る闇が異常に恐ろしくて。
潰れそうなくらいの佐久間からの愛はどうしようか。
いっそ丸めて棄ててやりたい、俺は佐久間が怖くて仕方がないようだ。
瞼に焼き付くのは歪んだ佐久間の笑顔、
耳に染み付くのは恐ろしい愛の言葉達、
暗闇の中でぐるぐる回る。
『ねぇ鬼道さん、俺のこと、好きになってください』
耳を塞いでも聞こえてきた声は厭に近くて、背中に冷たいものが走る。
『俺はあなたが愛しくて、…でも、俺を好きにならないあなたが憎らしい』
大きな声で拒絶してやれば、俺は救われるのだろうか。
恐る恐る目を開けると、眼前に佐久間がいた。
綺麗な色の瞳。
いびつに笑みを象った。
ただひとつ問題なのは、俺は、この男がそんなに嫌いじゃないということだ。
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