最期の嘘

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それからの生活は更に貧しい生活を送ることになる。 収入といえば静江の年金くらいなもので、その他には全く収入源がなかった。 最低限度のご飯で兄妹は育てられる。 洋服に関してもいくら洗濯しても、古くなれば薄ら汚くなっていくものだ。 靴にしても同様。 しかし洋服や靴を買うお金などない。 転校した浅草の小学校では、貧乏というだけで工藤哲弥は毎日虐められていた。 帰り道には同じクラスの男の子達から石を投げられながら帰ってくる始末。 そんな時はいつも工藤静江は竹ホウキを片手に男の子達を追っ払ってくれた。 お婆ちゃん。 お婆ちゃん。 お婆ちゃん。 決まって泣きながらいつもお婆ちゃん。 そう、いつもお婆ちゃんなのだ。 気が弱い甘えっ子の工藤哲弥はいつもお婆ちゃん頼みで抱きつきながら泣いていた。
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