1726人が本棚に入れています
本棚に追加
突然、美奈が何か思い出したような表情をした。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「私達のお父さんとお母さんはどんな人だったの?」
2歳にして両親を亡くしている工藤美奈にしてみれば、どんな親だったかなんて記憶にはない。
「親父はいつも無口だったな…。黙々と仕事をして、夜遅くに帰ってきても、いるのかいないのか分からないうちに朝にはいないし」
「じゃあ…お母さんは?」
「お袋は優しかったな…、でも親父と一緒でさ、真面目で固い感じだったけど…やっぱり温かかったな…」
「そっか…。どうして死んじゃったんだろうね…、他には選択肢がなかったのかな…」
「さぁな…。でも生きてるとさ、死にたいと思うことなんて、確かにいくらでもあるよな」
「ねねちゃんの姿…、見てほしかったね」
「そうだな、親は子に託して、また子は次の子に託すってところをな…、見てほしかったな」
最初のコメントを投稿しよう!