最期の嘘

15/45
前へ
/396ページ
次へ
突然、美奈が何か思い出したような表情をした。 「お兄ちゃん」 「ん?」 「私達のお父さんとお母さんはどんな人だったの?」 2歳にして両親を亡くしている工藤美奈にしてみれば、どんな親だったかなんて記憶にはない。 「親父はいつも無口だったな…。黙々と仕事をして、夜遅くに帰ってきても、いるのかいないのか分からないうちに朝にはいないし」 「じゃあ…お母さんは?」 「お袋は優しかったな…、でも親父と一緒でさ、真面目で固い感じだったけど…やっぱり温かかったな…」 「そっか…。どうして死んじゃったんだろうね…、他には選択肢がなかったのかな…」 「さぁな…。でも生きてるとさ、死にたいと思うことなんて、確かにいくらでもあるよな」 「ねねちゃんの姿…、見てほしかったね」 「そうだな、親は子に託して、また子は次の子に託すってところをな…、見てほしかったな」
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1726人が本棚に入れています
本棚に追加