プロローグ

4/11
前へ
/396ページ
次へ
「恐らくまだだろ。ソワソワするなよ…」 哲弥がキョロキョロ周りを見渡しているのに気づいて、隣に座っている男が呟くように伝えた。 男の名前は木村秀人。 香織の現彼氏である。 ホストという色恋を商売とし、それを武器にした仕事をしている秀人は同じ男から見ても外見が非常に美しかった。 5年付き合っていた恋人の香織から、秀人のことが好きになったと告げられて振られるのも仕方ないのかもしれない。 現彼氏としては香織のことが心配なのだろう。 秀人も哲弥と同じように横で大人しく座っていた。 「大人しく座ってられるか…」 哲弥はそう言って秀人を睨む。 「そうだよなぁ…。これからオメェがひとりで育てなくちゃいけないんだもんな」 そう言って、秀人は悪意のある笑みを浮かべていた。 それは秀人にとって他人事であるという意味の象徴である。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1726人が本棚に入れています
本棚に追加