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帰りが遅いアル達を心配していた王と王妃は帰ってきた息子達に安心した。
そして城の部屋の一室にネムの両親を寝かせ、応接間で何があったか話を聞き終えた所だった。
「なるほど…大変だったな。使いから帰ったルフに探しに行ってもらって正解だったな。」
「そうですね。ありがとうございます、ルフ。」
王妃に礼を言われたルフは少し遠慮がちに頭を下げる。
そしていきなり王が困ったような顔をして皆を見渡す。
「父上?どうしたのですか?」
「いや、困った事になったな。早くエルーの国を救うため明日、出陣しようと思っていたが…ワウリント夫妻はあの様子では三日は眠り続けるだろう。」
王の元気のない言葉に皆、顔をふせてしまう。
だが、一人だけ王を真っ直ぐ見ていた者がいた。
「王様、あたしが戦に参加します!!」
大きな声でそう告げたのはネムだった。
「ネム!?」
そんなネムを反対するような目でアルが見るがネムはそれを無視して王を真っ直ぐ見る。
「今、近くに魔物使いはあたししかいません。エルーには両親を助けてもらいました。次はあたしがエルーを助けたいのです!!」
「ネム…」
思いも知らなかったネムの言葉にエルーが目を見開き驚く。
ネムは未だ、王を見て答えを待っていた。
そんなネムの決意が伝わったのか、王は観念したように頷いた。
「わかった。ネム、お前にかけよう。」
「!!…ありがとうございます!!」
たちまち笑顔になるネム。するとその隣に座っていたアルが突然立ち上がった。
「アル…反対するの?」
「いや、反対はしないよ。ネムの力は必要だ。」
「じゃあ何なんだアルヴィンス。」
父の問いに先程のネムのように真剣に父を見るアル。
アルは冷静な口調で告げた。
「明日の戦、父上の代わりにボクに指揮をとらせてください。」
驚愕する王以外の者達を差し置いて王とアルは話を進めていく。
「アルヴィンス、戦の指揮をとると言うことは責任は重いぞ?」
「わかっています。ですがボクはいずれにせよ数年後には王になり、全ての責任を任されるのです。一つの戦の責任をとることが出来なければ…何も出来ません。父上、お願いします!!」
頭を下げるアル。
そんなアルをじっと見ていた王が口を開く。
「頭をあげなさい。」
頭を上げたアルが見た王の表情は笑っていた。
「やってみなさい。アルヴィンス。」
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