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「村はザンクっていう奴ひきいる盗賊団に襲われたんだ。奴らは金目の物を盗んだ後に村を焼き払い村人を全員刺し殺したんだ。老若男女かまわずな。」
リクは小さな声で「ひどっ…」と呟いた。だが、ルフはなにも聞こえていない様子で先を続ける。
「オレはすぐに自宅があった場所に行き、死に物狂いで家族を捜した。」
するとルフは小さな声で「だけど…」と呟く。
「だけど、オレの妻と息子は遺体さえも見つからなかった。オレはザンクに復讐するために手掛かりを追ってあいつを捜しだした。そして、オレはあいつのアジトに一人で乗り込んだ。」
「アジトって…何人位いたんだ?」
「百は軽く超えてたな。ザンクは逃げるために三十人位にオレの相手をしろと命じたんだ。オレはそいつらと戦っている間にザンクと他の奴らを逃がしてしまった。」
「ルフはその…残った奴を殺したんだろ?」
「ああ、一人残らずな。」
「まさかそれが原因で死刑に?」
「いや。ザンクとその仲間達はお尋ね者だ。殺しても何の罪にならない。正当防衛になるだけだ。」
「じゃあ何で…」
「オレはそいつらを始末した後、ザンクが使っていた空き家に入ったんだ。そこには…っ」
ルフがその時の事を思い出したのかすごく憎しみ溢れた震える声で先を続ける。
「そこには…数体の死体があったんだ。」
「死体…!?」
「ザンクは呪いの魔法を得意としててな。あいつは自分の魔法の強化の為に能力者をさらって、自分の魔法をかけて能力者を殺してたんだ。…魔法を試すみたいにな。」
「え…じゃあその死体って…その能力者?」
ルフは頷く。能力者は生まれつき不思議な力を持っている者の事。魔法とは違う。魔法は呪文を唱え杖で魔法を出すもの。能力者はそれらを必要としないし、火に触れても火傷をしない者、水の中でも息ができる者みたいな感じにそれぞれ使う能力がある。
千人に一人という確率で能力者は産まれるのでこの世界で、限られた人しか能力者はいない。
その能力者をザンクは呪い殺していたと言うわけだ。
そんな事を考えていたリクはルフが話を続け始めたことによって、ルフの話に耳をかす。
「その数体の死体の中心には座り込む女がいた。」
「女?」
「…オレの妻…ラート。」
「!生きていたのか!」
「…呪いをかけられていた。死の呪い。」
「えっ…じゃあ…ルフの妻…ラートさんは…」
「未来を見る力があった。能力者だったんだ。」
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