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「綺麗…」
「あ、ああ…そうだな。」
エルーの言葉にリクは曖昧な返事をする。
リクはネムの笛の音色に耳を傾けながらも目線は男に向けていた。
そんなリクに気付かず男はネムをじっと見ている。
“長”が低く唸った。
だがネムは笛を吹くのを止めず、肩に乗っているネロに視線をやる。
ネロが頷き“長”を見た。
『新鮮なるミスラの森の“長”よ!!その怒りを静め、自らの傷を癒し、寝床へ帰られよ!!この者は魔物使い、ネム・ワウリント!!魔物と心を通わせれるもの!!どうかこの者を信じ、怒りを静めたまえ!!』
ネロの説得の後、“長”は何かを喋るように声を上げるが次第にそれは聞こえなくなると、“長”の体から光が溢れ、傷が塞がっていく。
完全に傷が塞がった“長”が体を起こし、ネムの前に座り、ネムの瞳を見る。
“長”の瞳にはもう怒りは消えていた。
それを感じたネムは笛を吹くのを止めた。
「“長”。」
静かに“長”に近づくネムは“長”の体に触れた。
「貴方は森の奥の寝床に戻り、この森をお見守りください。」
その言葉を聞き、“長”は体を動かし、森の奥へと消えていく。
「ふぅ…」
小さくため息をつくネムにエルーが駆け寄る。
「大丈夫?」
「うん、…森は一安心…かな…それよりアルは…」
「アル様ならここだ。」
男が呟けば男の後ろの木々の間からアルが出てくる。
「「「アル!!」」」
三人とも見事にハモりアルに驚く。
「ア、アルーー!!」
「うわっ!!」
ネムが嬉しそうにアルに抱きつく。
アルは困ったように眉を下げて笑ってる。
「良かった…無事で…」
「ごめん、ごめん。…すんでの所で抱き抱えられて助かったんだ。」
アルは男を見ながらそう喋る。男もアルとネムを見て、口元を緩める。
「アル、この人は…?」
不思議そうに首を傾げてエルーがアルに問いかける。
リクは男を観察でもするように見ている。
「……わからない?……ああ、でも顔を隠してるし当たり前か。」
今までと違う、意地悪な笑みをアルが浮かべて二人を見ると、ネムを体から離し、男を見る。
「そのフードを取って。」
その言葉に男は少し躊躇うがゆっくりと頭のフードを取った。
男は少し長めな青髪を首で一つに結んでいた。
そして微笑みながらリクとエルーを見た。
その笑みに二人は見覚えがある。
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