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王の許しが出てアルが明日の戦の指揮をとることに一同皆、暫く反対したが、王の『アルヴィンスを信じろ』との言葉に皆、渋々承諾した。
そして今は夜中、城は静まり返り見回りをする数人の兵士の歩く音が響く。
一つ部屋を与えられたリクは広い部屋に暫く眠れなかったが、一時間ほど前にようやく眠りにつけた。
だが、今はリクは眉をよせ、苦しがっている。
リクの脳があることを認識し始める。
…――そうか自分は
夢を見ている。
夢は若い茶髪の男が幼い頃の自分に笑いかけている。
とても懐かしい夢だ。
穏やかだった。
平和だった。
だけど気がつけば周りの景色は変わり、森だろうか?
周りが燃えて真っ赤だ。
そして目の前には自分の腕を引っ張り、ここから連れ出そうとしている、あの男。
幼い自分は静かに魔法で剣を出し、男の腕を肩から
切り落とした
「っ!!」
ガバッと勢いよくベッドから起き上がるリク。
身体中から冷や汗が沸き上がり、息も苦しそうに乱れていた。
「はぁ…はぁ…っ…くそっ…!!」
悔しそうな悲しそうなそんなリクから出た言葉は誰に聞かれることなく、一室に響いた。
「……父さん…」
次の日、城の門付近にたくさんの兵士が集まり、出陣の準備を簡単にすましていた。
遅れてやって来たリクにエルーは心配そうに近づく。
「リク。」
頭を片手で押さえていたリクが心配そうに見ているエルーに気づく。
「…どうした?エルー?」
「大丈夫?顔色悪いよ?」
その言葉に驚いたリクだがすぐに口元を緩め、エルーを安心されるように頭を撫でてやる。
「大丈夫だ。これから戦いに行くんだ元気じゃないとな。」
エルーはまだ、心配そうにしていたが少しは安心した顔になった。
(今はあの事は忘れよう。)
リクはそう思い、これからの戦に身を引き締めることにした。
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