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城下町の門をじっくり森の木の影から観察するリクとルフとアル。
エルーとネムは兵士達と共に少し後ろに隠れている。
アルは門の周りを警備している体の大きな魔物二匹を苦い顔で見た後、ため息を漏らす。
「アル様…」
「警備が厚い。きっと城下町も魔物で溢れてる。突撃しても時間がかかるし、ジュラが陛下を人質にする可能性もある。そうなるとジュラに時間を与えられない。」
どうする、と悩んでるアルの後ろから声がかかる。
「アル、ふたてに別れよう。」
「…ネム、エルー。」
「エルーに聞いたの抜け道があるって。」
隣のエルーに目線をネムがやればエルーは何故か辛そうに頷いた。
「確かにあるけど…とても狭い道だから兵士達が通るのには時間がかかるわ。」
「だから、二手に別れよう。アル。正門から突撃して注意をそらす者と、エルーが言う抜け道からジュラを討つ者と。」
「でもネム、誰が抜け道に行って誰が正門から戦うの?」
どうやら正門から突撃して戦う者達を不安に思ったエルーが声を震わせ、ネムに聞いた。
ネムはためらうことなくこう告げた。
「兵士達とあたしが残る。戦うわ。だからエルー達は裏口から行って。」
「っネム!!それは危険すぎだ!」
「でも魔物をどうにか出来るのはあたしだけ!戦わなきゃいけないの!」
悲痛で真剣なネムの叫びにアルは押し黙る。
「アル様。大丈夫です。俺もここに残り、命をかけてネムを守りましょう。」
押し黙っていたアルに優しく声をかけたルフ。
リクとエルーが何かを言いかけたが二人はその言葉を飲み、耐えた。
アルも仕方がないと理解したのか顔を上げ、真っ直ぐ前を見た。
いつの間にか兵士達も近くに来てアルを見ていた。
「…わかった。正門に突撃するのをネムとルフ。そして君たち兵士達にまかせる。……死なないでくれ。」
その言葉に皆優しくアルを見つめ、深々とお辞儀をした。
ルフは頭を上げた後リクに近づいた。
「ルフ…」
不安そうな表情のリク。
「…そんな顔をするな。お前が俺の代わりにもアル様とエルーを守るんだ。しっかりしろ。」
「…死ぬなよ、ルフ。絶対だ。」
「ああ、お前もな。生きてまた会おう。……約束だ。」
少しリクは微笑むと『約束』と言ってルフの腕に自分の腕をつけた。
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