君との出会い

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男の人がこっちへ戻ってきて、ボールを私に差し出した。 「次は気い付けんしゃい」 「あ、ありがとうございます」 私はボールを受け取って、お礼を言った。 パーカーのポケットから小さいタオルを取り出して、ボールを拭こうとしたけど、男の人も濡れているため 「あの、これ使ってください」 ボールのお返しにタオルを差し出した。 そのタオルをじっと見つめてから 「…大丈夫じゃ。 心配せんでもいい」 優しく微笑んで、断られた。 光が川に反射していたのもあると思うけど、彼の周りがキラキラと光って見えた。 「え、でも…濡れてるし」 「歩いてりゃ、すぐ乾くじゃろ。 足が冷えたぐらいで、風邪は引かんよ」 「でも、」 「いいんじゃ。 そのボールに使いんしゃい」 彼の押しに負けて、ボールに使うことにした。 なんか申し訳ない気持ちになり、何か私に出来ることはないですかと聞いた。 「ん、何もありはせん」 「本当ですか?」 「本当じゃ」 「正直に言ってくれていいんですよ?」 「んー……じゃあ、ボールであいつと遊んでもいいかの?」 それを聞いて私は少し驚いたけど、すぐ笑顔を作ってボールを渡した。 チョコに近づき、匂いをかがせて 「そらっ」 ボールを遠くへ投げた。 チョコはすぐボールを取って、彼の方へ持っていく。 彼はチョコの顔を撫で回し、またボールを遠くへ投げた。 「うまいのぅ。 よく出来ました」 また顔を撫で回す。 チョコも嬉しそうだった。 頭を優しくぽんぽんして、 「飼い主の言うこと、ちゃんと聞くんじゃよ?」 チョコはわんっと一回吠えた。
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