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「なんか、沙歩…よな」
声が小さくてあまり聞こえなかったから、私は「え?」と聞き返そうとしたとき
「やっぱり沙歩だ!!」
って、女の子の声が聞こえてきた。
女の子の方を見ると、ショートボブな髪型を巻いている栗色の髪の子だった。
その子は私の前に立った。
「あたしだよ、鹿子 結菜[シシネ ユイナ]!
ほら、小学校一緒だった」
「鹿子…あ、ゆいちゃん!?」
「そうだよさーちゃん!!
久しぶりーっ」
結菜は机越しに私に抱き付いて頬をすりすりしてきた。
そんなとこは小学校から変わりはないようだ。
「やっぱさーちゃんの頬、すべすべで気持ちいいなー」
「ちょっ、ゆいちゃん」
「結菜?」
「ん?
…あーっ!!
かい君も一緒だったの!!」
結菜は今度は海斗に近付いて、何かを喋っている。
時折見せる海斗の笑顔は結菜に向いていて。
心がズキズキして少し痛い。
その笑顔は私だけに見せて、私だけに向けてって思ってしまった。
私は結菜に嫉妬しているみたいだった。
「あ、そろそろ時間だね。
またね、2人とも」
結菜は台風のように去っていった。
懐かしい人に出逢った喜びと、海斗の笑顔を向けられた結菜に嫉妬したこと。
まだ心のズキズキは取れない。
自分ってこんなに正直で、こんなにも嫉妬深かったのかって気付いた。
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