第2章

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市立病院に入院し、今回は手術ではなく、放射線治療することになった。 お見舞いに行くと、点滴をしていたり、薬を飲んでいたり… それでも、元気だった。 漬物が好きなお母さん。 マグロが好きなお母さん。 病院食では、物足りないらしく、よく電話がかかってきた。 『漬物と鉄火巻き買ってきて。』 言われるのは、いつもそれだった。 他の必要なものは、父が用意していたから。 漬物と鉄火巻きを持ってお見舞いに行く。 それを美味しそうに口にする母。 弱音を吐かない母は、病気のことや治療のことは自分から言うことはなかった。 私の仕事の話や友達との話を自分のことのように楽しそうに聞いている。 私と母の時間は、いつもそうして過ぎていった。
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