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上司はボールペンを回しながら、事務的な口調で説明する。
「死神は死亡予定の人間の生死を左右してはいけない。これは不動の規則だ。これに触れなければ、姿を現しても問題はない。もちろん正体を明かさずにね。」
「ちょっと待てよ!もしトッドが息子のふりをして松山を勇気付け、寿命を延ばすようなことがあったらどうする?生死に干渉したことになるぞ?」
キースは上司に対しても、敬語なしでものを言う。
「キース君、よく考えてごらん。松山は老衰で死ぬんだ。突発的な事故や事件じゃない。気の持ちように左右される病気でもないんだよ。」
上司は顔色一つ変えずに話し続ける。
「死亡予定、とあるが、実際には死亡確定だ。誰も動かすことはできない。何が起ころうとね。」
キースはブツブツ文句を言っていたが、反論することができないようだった。
「私が心配しているのは、息子に会えなかったことで松山が未練を残すことなのです。」
私の言葉に、上司は
「そのことで、自分の負担が増えることが心配なのだろう?」
と鋭く指摘した。
「だ、第一、松山が死ぬまでに本物の息子が来たらどうするんだよ!?計画がバレるじゃねぇか!!」
キースが必死に異議を唱える。
「松山の病状を考えれば、それも問題ない。」
上司がさらりと受け流した。
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