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アパートに着くと部屋の明かりが消えていた。
慌てて階段をかけ上がると、犬を左手に抱き直しポケットから鍵を取り出す。鍵穴に鍵を差し込もうとした時…
ガチャッ
内側から鍵が開いた。ドアが少しだけ開く、隙間から青白い顔をした女が顔を見せた。
「エリ!電気が点いてないからびっくりしたじゃないか…。起きてたのか?」
僕の質問には答えず、エリはジッと僕の腕に抱えたタオルを見ている。
「あぁ!待たせてごめんな…やっと見つけたんだ。」
そう言いながら中に入ると明かりを点ける。キッチンのテーブルにそれをおろした。
僕の後ろから少しよろめきながらついてきたエリの手を取り、椅子に座らせた。エリがタオルに手を伸ばす…
「今日も見つからないかと思ってたら、そこの通りでタクシーに…」
上着を脱ぎながら、さっきの話をしようと話し始めたのをエリが遮る。
「この子…生きてる…。」
「あぁ、だから今そこで轢かれて…」
「うそっ!」
そう叫んでエリがいきなり立ち上がる。が、すぐによろめいて倒れそうになるのを慌てて支えた。
「どうしたんだ?危ないじゃないか。」
エリは僕に支えられながらもテーブルの上のそれを抱き上げた。
「お願い…今すぐ病院に連れて行って…。」
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