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エリに言われて何件か動物病院に電話してみたが、こんな田舎じゃ夜間の救急病院はないらしい。どこも留守番電話に繋がるだけだ。
エリはヒーターの前で心配そうにそいつを撫でている。
「ダメだ…どこも開いてない。朝まで待たなきゃ無理だよ。」
「そぅ…。」
僕の言葉に振り向いたエリの顔はひどく悲しげだった。しかしそんな表情でさえ美しく見えるのは、僕がエリに惚れているからだけではないはずだ。
エリは本当に綺麗だった。彫刻のように整った顔立ち、漆のように真っ黒な髪、対照的に透き通るように白い肌…それが今はまるで生気が感じられないほど青白くなっている。
「でも…。いいのかい?せっかく手に入れたのに…このままじゃエリが…。」
考えただけで僕は恐くなり、エリを抱き寄せた。
「私は大丈夫。あと2~3日位は平気よ…。それよりもこの子が朝までがんばってくれるといいんだけど…」
せっかくエリが喜ぶと思ったのに…久しぶりだったから焦りすぎてしまった。もっとゆっくり帰るべきだった。いや違う、ちゃんといつものようにすればよかったんだ…。
後悔したところで今更どうしようもなかった。
僕にはただ朝まで祈る事しかできない…。
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