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「ただいま。」
玄関を開けると同時に白い塊が飛びついてきた。尻尾をちぎれんばかりに振り、満面の笑みで私を見上げている。
「トト、お利口にしてた?」
ワンワン!
私の問いかけに答えるようにトトが吠える。
「しーっ!ほら…行くよ。」
靴を脱ぐと急いで階段を上がる。トトも一緒に階段をかけ上がると先に部屋の前で待っている。
扉を開けて中に入ろうとした時、階下のリビングから母親の声が聞こえた。
そのまま気づかないふりをしてドアを閉めると鞄をベッドに放り投げる。トトもベッドに飛び乗り鞄の隣に座った。
制服を着替えると私もベッドに寝転ぶ。待ってましたとばかりにトトのキス攻撃が始まる。
トトがうちにやってきて10年。トトは私のたった一人の親友であり家族だった。
10年前、両親が参加した里親探しのボランティア。そこで票集めのパフォーマンスとして引き取った子犬がトトだ。
当然そんな子犬に関心を持つはずもなく、お手伝いに世話を押し付けほったらかしにしていたのを私がこっそり自分のものにしたのだ。
マルチーズの雑種らしいが、少し大きめな事を除けばマルチーズそのものだった。
両親は地域活動や慈善事業にばかり精を出し、世間体の事しか頭にない人達なので、友達付き合いにもあれこれ口出しされるため…思春期の娘の話し相手はトトだけだった。
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