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コンコン…
ノックすると同時にドアが開く。
これじゃノックの意味ないんだけど…まぁ娘のプライバシーなんてどうでもいい母親だから仕方がない。
「エリ、帰ったら挨拶くらいしなさい!そんな当たり前の事もできないなんて…。犬とばかり遊んでないでしっかり勉強しなさいよ。浪人なんてみっともない事になったらどうするの。」
はいはい…そうですね。そんな事になったら浅野家の名前に傷がつきますもんね。
母は私が机に向かうのを見届けるとリビングに戻って行った。
浅野家の名前に傷…小さい頃から耳にタコができるほど聞かされてきた。
こんな窮屈な家から何度逃げ出したいと思ったかわからない。
でも私には逃げ出す勇気も、反抗する度胸もなく…親の言いなりに生きている。
きっとこのまま親の決めた大学に行き、親の決めた相手と結婚させられる…そんな未来しか私にはないのだ。
そう考えるたびに死にたい気持ちになるのだが、そんな時はトトがいつも以上に甘えてくる。
まるで
「私のために生きて」
って言ってるような気がして、私はますますトトを愛しく感じるのだ。
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