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第2話
「はい?」
上手く聞き取れなかったので“もう一度”と催促するように首を軽く右にねじって、左耳を彼女の方へ近付けた。
雨に濡れた布の匂いに混じって、甘いバラの香りがする。その微かな匂いが鼻の奧を刺激する。
いい匂いだな‥‥。
思わず顔を向けたら目が合った。
「あの‥‥煙草を」
「あっ‥‥はい御煙草ですね」
声の小さい人だ。目が大きくて吸い込まれそうになる。
随分と顔が整っているな‥‥。
「銘柄の方は?」
通常、お客の顔をマジマジと見ることは無いのだが、何となく気になって観察するように顔を見てしまう。
髪は黒髪でストレートのロング。濡れた髪が色気をさらに増している。芸能人の誰かに似てる気がする。
「あの‥‥」
「はい、どれですか?」
この娘も、合コンとかするのだろうか。
「あの‥‥赤い煙草なんです」
🏪江ノ本
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