🏪 午前3時の純情編

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  第2話  「はい?」   上手く聞き取れなかったので“もう一度”と催促するように首を軽く右にねじって、左耳を彼女の方へ近付けた。   雨に濡れた布の匂いに混じって、甘いバラの香りがする。その微かな匂いが鼻の奧を刺激する。   いい匂いだな‥‥。   思わず顔を向けたら目が合った。   「あの‥‥煙草を」   「あっ‥‥はい御煙草ですね」   声の小さい人だ。目が大きくて吸い込まれそうになる。   随分と顔が整っているな‥‥。   「銘柄の方は?」   通常、お客の顔をマジマジと見ることは無いのだが、何となく気になって観察するように顔を見てしまう。   髪は黒髪でストレートのロング。濡れた髪が色気をさらに増している。芸能人の誰かに似てる気がする。   「あの‥‥」   「はい、どれですか?」   この娘も、合コンとかするのだろうか。   「あの‥‥赤い煙草なんです」   🏪江ノ本   
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