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「私とりーちゃんはこの格好じゃマズイわ。私服に着替えよ?」
有紀はまだボロボロの制服を指差して言った。
「そうだね。俺らは学校の制服を着ない方がいい。三島はそのままで」
高橋と有紀が指をパチン!と鳴らすと、真っ黒い靄(もや)のようなものが2人の身体を覆い隠し、風を吹かせた。
これが吸血鬼で言う、身支度というものなのか。
2人は頭まですっぽり靄で覆われ、まるで黒い繭(まゆ)のようだ。
「待たせたな」
高橋が黒い靄(もや)を取り払う仕草をすると、パッとそれは跡形も無く消えた。
高橋はたった今風呂から上がったように清潔で、シワ一つない真っ白な、いまどきなワイシャツを、第一ボタンまでキッチリと留めて、上品に着こなしていた。
下はスキニータイプのジーパンを履き、男とは思えない程、これもまた良く似合っている。
靴は紐まで真っ黒なコンバースを履いていた。細身のくせに足が大きい。
髪は乱れてないのに、キッチリ整っているわけでもなく、程よいくらいにワックスを付けているようだ。
これは誰が見ても美男子だと思うだろうと三島は思った。
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