吸 血 鬼

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「三島、それ貸して」 「ん」 有紀は三角錐の純銀を受け取ると、空中でネックレスと純銀を通し、首飾りを作ってあげた。 「ハイ、よく似合うわ」 「サンキュ…!」 有紀は宙に浮かせた首飾りを三島の首に通してやり、出来栄えを満足げに見ていた。 「よし、そろそろ行こう」 「俺、お前らを待ってるからな!」 「必ず迎えに行く!!」 「待ってて!」 3人は手を繋ぐと、大広間から姿を消した。 《人間界:校内》 「有紀ちゃん………これで良かったのかな………」 「大丈夫……時期目を覚ますよ」 「三島、またな」 「約束は守るから………しばらくお別れね」 2人の吸血鬼は、気絶している三島に言葉を送りながら、寂しそうに言った。 3年4組の皆が、三島の名前を呼んでいる。この事務室にも時期、誰が探しに来るだろう。 この学校は政府によって壊滅させられたとして、マスコミが騒いでいる。ヘリは上空に何機も飛び回り、悲惨な状態を世間にしらしめた。 体育館にいた大勢の人間も目を覚まし、偽物のクローンたちは、監察下に置かれる事になったが、寿命は短く、直ぐに死んでしまった。 政治家たちは捕まり、新しい日本を築き上げる為に、多くの人間が立候補した。 有紀と高橋は、それを見守っていた。生徒の中には、錯乱し精神がおかしくなったままの者もいたし、人を殺したくて堪らないという者もいた。 そして佳奈は、ずっと校内に隠れていたらしく、元気に生きていた。 有紀は生き残った皆を遠めから見ながら安堵し、目に涙を溜めた。それを高橋が優しく抱きしめる。 三島も目を覚まし、皆の中へ入って行った。それを見届け、有紀と高橋は、人間界からフッと姿を消したのだった。
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