吸 血 鬼

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「三島!!何処にいたんだよ!探したぞ!」 宇城は怒鳴りながらも、三島を見てホッとしているのが分かった。 「腹減ってないか?!」 「今まで何してた!?」 「心配したんだよ…!?」 クラスの皆が声をかけてくれるのに、三島の心の中にはポッカリと穴が空いたように寂しかった。 何故そんな風に感じるのか、全く心当たりがない。でも、一つだけ確かな事がある。 「俺………腹は減ってない」 皆はあまり気に止めなかったが、三島はどうしてだろうと思っていた。満腹感を味わっている身体は、とても幸せに感じた。まるで心の穴を塞いでくれるかのようだ。 「皆!救護テントに列ぶんだ。手当てしてもらおう」 宇城の呼びかけで3年4組は移動を始めた。多くの生徒が列を作って、順番を待っている。グランドには自衛隊も動員され、校内に入り込もうとしていた。 「俺、地下室で一人だったかな?小田先生は死んだのか?」 三島が広瀬に聞くと、広瀬は眉を寄せた。 「地下室で死体が見つかったって、誰が言ってたぞ…」 「そうか………」 「お前、その首に付けてるの……何だ?」 「あれ……?」 三島は言われて初めてその存在を知った。少し重いネックレスだ。 「そんなの付けてたっけ?」 「見覚えがない……けど……」 「まぁいいや、早く行こうぜ」 「あぁ………」 三島はネックレスを掴みながら考えた。思い出せそうで思い出せない。 でも大事な物であるという意識はあった。 「俺、どうかしてんのか?」 三島は独り言をぽつりと呟くと、皆のいる列の中に紛れ込んだ。 クラス対抗は終わりを告げ、学校は地下室もろとも取り壊される事になった。 生徒たちや教員は、違う学校へ編入し、バラバラに過ごす事になってしまったが、他の誰よりも絆は強い。 日本中がこの事件にどよめき、世界にもそれは知らされた。その知らせは、有紀たち吸血鬼の耳にも届いていた。
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