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《銀嶺家:大広間》
「有紀、理緋途…………分かっているとは思うが………」
2人が帰ると、両親が待ち構えていた。報告はもう済んだらしい。
「三島くんを迎えに行くのは、ブラックフォードを仕留めた後にしてね」
由有花夫人が2人に申し訳なさそうに伝える。
「はい、承知いたしております」
「分かってるわ…」
高橋は頭を下げ、有紀は辛そうに視線を下げた。
「代を継ぐ準備をせねば………」
「そうね……あちらの家はもう代変わりしてるもの。家(うち)も早くしなきゃ」
「理緋途と有紀…………とりあえず今日はゆっくり休め………疲れただろう…」
「お部屋は一緒でいいわよね?」
由有花夫人の問い掛けに、2人は顔を赤くした。白い肌が火照るのを感じる。
「由有花………気が早いのでは………」
「何言ってるのー。2人は夫婦になるんだから」
「えっと…お母様………まだ式を挙げていないのに、同室というのは………」
「恐れながら、僕も彼女に同感です……」
「まぁ…照れ屋さんね。気にする事ないのに~」
そう言うと由有花夫人は大広間から出て行った。
「お母様ったら……ゴメンね、りーちゃん」
「いや、認めてもらえて嬉しく思ってるよ」
「2人とも……ブラックフォードを必ず仕留めるんだ………創始者様からの命に背かぬようにな……シルバーブレッドは、式の時に………」
そう言うと、灯理夜(ひりや)は妻の後を追うように大広間から出て行った。
有紀と高橋は返事をして、さっきまで三島のいたテーブルを片付け始める。
次に会うのはいつになるだろうかと思いながら、2人は黙々と片付けを続けた。
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