『白光の魔女の弟子として』

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   なので、フェロンはエリーの手の上に自分の手を乗せる。二人羽織のような体勢で、つまりは身体の密着度が凄いわけで、耳に吐息のかかる位置なわけで。  こういう状態に免疫のないエリー。このままでは頭から湯気ではなく黒煙が発生するのも時間の問題である。 「エリー? インクに属性魔力だけ込めて、あとは力を抜いてくれる?」  無言で何度も首肯し、そして力を抜く。 (――って、抜けるかあああっ!!)  ひいいっ!? と心の中で乙女らしからぬ悲鳴をエリーが上げている間に、手首の力が抜けぬまま、しかしフェロンの手により綺麗な曲線、直線が描かれてゆく。  その光景に、エリーの手からは自然と力が抜けていた。  サラサラと魔紙に魔術陣を描きあげる様を見て、やはりな、とリルアは独り静かに笑みを浮かべる。  才能はある。簡単な魔術陣だからこそ、それは見る者が見れば、その魔術陣の美しさ、機能美が理解できる。  力強いタッチで描く部分と繊細なタッチで描く部分。その僅かな線の強弱は、上位の魔術陣になればなるほど威力に大きな差が出る。  それらを含め、フェロンの描く魔術陣は完璧とも言える完成度で描かれていた。
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