『白光の魔女の弟子として』

10/25
前へ
/375ページ
次へ
   魔術陣を描き終えたフェロンは、エリーの手を放す。しかし、ぼんやりしたまま彼女は動かない。 「エリー?」  不思議そうな顔のフェロンに呼ばれて気付いたエリーは、慌てて魔紙を手のひらの上に乗せ、その状態で水盤の上へ手を差し出す。 「――万物の命育みし水の象徴。今ひとたびその姿を変え、魔力の身許へ還らん」  直後、水盤に満たされた水が魔力へと変化し、その手にふわりと燐光を引きながら纏わりつく。  まさに一瞬で水を、僅かの痕跡も残さずに魔力へと分解した魔術陣。  それだけの魔術陣を描ける才能がありながら、それでいて本人は一切の属性魔術を行使できない。  もし、あのまま何事もなく成長していれば、とリルアは考え、そして最後はやはり後悔に苛まれる。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7170人が本棚に入れています
本棚に追加