『白光の魔女の弟子として』

13/25
前へ
/375ページ
次へ
   ◆ ◆ ◆  生死の境を彷徨いかけた者の悲鳴が木霊し、慈悲を求めるその言葉を暴風の音が掻き消してゆく少女による一方的な戦闘訓練の音色が轟く。 「さて。あっちはあっちで始めたようだし、こっちも始めるぞ」 「う、うん……」  スカートを手で押さえながら、まだ今も踏み潰し続けているエリーを止めようかと考えたが、それで自分まで被害者に名を連ねたくないフェロン。  早々に諦め気分で黙祷してから、模造武器を構える。 「どこからでも来るがいい」  余裕とでも言うような笑みを浮かべるリルアに、しかしその通りだと実力差を認めてフェロンは大地を思いきり蹴る。  ドン!! と踏み込まれた地面は、雨降り後でもないのにフェロンの足跡を深く刻んだ。  そうして直後、鈍い金属音が三度、空気をビリビリと震わせる。  フェロンの幾分か逞しくなった腕から放たれた渾身の三連撃は総て阻まれ、しかもリルアは笑みを崩さず、さらには片手のみで総てを捌かれた。 「当たらない……」  フェロンの剣は遅くない。むしろ同年代の剣と比べれば歴然。王国精鋭の騎士と比較しても、その速さだけならば遜色ないレベルに到達している。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7170人が本棚に入れています
本棚に追加