『白光の魔女の弟子として』

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   言葉の途中、一瞬で距離を詰めてきたリルアの手が触れたと思った時には、すでにフェロンは宙を舞っていた。  しかも巧妙に関節を極め、受け身を許さない、斬って落とす速さの逆落とし。しかも、下は土ではなく石畳。このまま落ちれば命が危うい。反射的にフェロンはリルアの首を蹴る。 「あえ?」  至近距離にもかかわらず空振り。しかし蹴りを避ける為に相手の手は離れ、地面まで数センチの猶予が発生。身体を捻る。  完全には間に合わず、したたかに肩を石畳で打ちつけながらも、可能な限り素早く転がり追撃をかわす。  視野の端を、頭を踏み砕きにきたリルアの足が掠め、石畳に数センチばかりめり込んだ。  フェロンはゾッと鳥肌を立てて跳び退り、リルアに向かい叫ぶ。 「殺す気なのっ!?」 「まさか。ちゃんと手加減している。それに終わりとも言ってないだろう? 次は素手だ」  外見はもの凄い美人だが、その中身はエッフェンベルグ王国で最強の七人、ランク《ティアラ》の称号を持つ女性である。  それは一般的な認識として魔術に長け優れた人とされているが、とんでもない。  総てにおいて超人的だからこそランク《ティアラ》という称号を与えられたのだと、彼女に育てられた六年間で嫌というほどに身体で学んだ。
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