『白光の魔女の弟子として』

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   触れなかった。フェロンは小さな円を爪先で描くように動き、僅かに身体を離して攻撃を封じると共にリルアの手をいなし、反撃に転じる。  が、まさにその時、 「ッ――!?」  すでに離れていたリルアの掌底から重い衝撃が迸る。それは見えない竜巻のように腹から背中へ突き抜けた。  その攻撃のお陰で全ての動作が僅かに遅れ、フェロンの肘打はリルアの着衣を掠めただけ。しかも彼女は微風に吹かれる木の葉のように、ふわりと必要最小限だけ遠ざかる。 「今の、なに? 触れられてもないのに、たったの一撃で……」  全身に脂汗が滲み、足が動いてくれない。立ち尽くすだけで精一杯。  理屈は解る。恐ろしい威力の遠当て。  いや、本当に恐ろしいのは、たとえ三階相当の高さを頭から落下しても無傷で済むレベルの防御力がある肉体強化の上から、触れずともこれほどのダメージを与えてくるリルア本人である。 「リルアさん、やっぱりバケモノ……」 「そうか?」と答えたリルアは、難しい表情で首を傾げている。 「肉体強化もなしに、こんな攻撃できるのはおかしーよ」
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