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よく見れば、リルアの脇腹にフェロンの右拳が触れていた。しかし、リルアの掌底もフェロンに触れたままである。
このまま魔力を撃ち込むだけで、ふたり共に相手の内臓を破壊できる距離で、そこに上下の体勢の優劣はない。
「俺が打とうとしたら、その一撃と同等の魔力を体内に巡らせて無効化した上で、直接魔力を撃ち込むでしょ? まだ死にたくないよ、俺」
答えながら、軽く咽せただけで口の中に血が溢れてくる。
咄嗟に魔力を内側に集中させて衝撃を力業で押さえ込んだにもかかわらず、この様である。しかも、肉体強化の指輪に魔力を上乗せしても今以上の効果は得られない。
つまり次に砕かれていたのは石畳ではなく、フェロン自身と確定しているのだ。
「だから降参。まいりました~」
フェロンはあっさり左拳をリルアから外した。
尚も緩まぬリルアの覇気を突きつけられているような圧迫感下で、再び肉体強化を実行しようとする防衛本能を気合いでねじ伏せ、肉体強化の指輪を外す。
リルアは少しばかり残念そうな顔をして覇気を消し、身軽く脇へ移動する。
「今日はこれでよしとしよう。で、感想は?」
「リルアさん、強すぎ」
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