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それを肌で感じて、少しだけ気持ちが余裕を取り戻した。
「ボク、じゃない、俺はフェロン・ルノワールです。これからお願いしますっ!!」
一気に言い切って頭を下げる。
反応が怖くて頭を上げられないでいると、その耳に手を叩く音がちらほらと聞こえてくる。
ゆっくり顔を上げる。強面の男たち――見ようによっては愛嬌のある顔に見えなくもない――は満面の笑み。
「ったく、待たせやがって! カテリナちゃん、こっちに祝い酒と坊主に歓迎のジュース持ってきて~!!」
カテリナと呼ばれた銜えタバコの二〇代前半の金髪女性は、バーカウンターからジョッキを片手に四つ、それを両手に持って現れ、テーブルに置く。
麦酒のキメ細かい泡がテーブルを濡らすが、誰一人として気にとめる者はいない。その中に三つ、オレンジ色の液体がなみなみと注がれたグラスがある。
「ほら、乾杯するぞ!」
にかっ、と笑顔でジュースのコップを手渡してくるのは、同い年くらいの茶髪の少年。鼻の頭に絆創膏が貼られている。
「あ、ありがと」
「おう。あ、俺はエトな。エト・クユイヒ。よろしくな、フェロン!」
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