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「あれ? カイウスさん、ラグジェスって? え? 確かリルアさんも……」
「ん? ああ、私はマスターの――」
「ワシの妻だ」
刹那的な速度でリルアの拳が、毛穴がお引っ越しされたカイウスの頭に落ちる。
「いきなり何を言うんだ、マスター?」
顔は笑顔。しかし心には般若を宿して詰め寄るリルアを見て、カイウスは顔を青くする。そんな二人を見たフェロンは、
「ああ、ご夫婦だったんですね。幸せそうで何よりです」
皮肉めいたフェロンの言葉に文句を返そうとして、その澄んだ笑顔を見てリルアは顔を引き攣らせる。
全く疑わずに、カイウスの言葉をすんなり信じた。
と言うのも、この程度の年の差など貴族の間では当たり前だったりする。
貴族側は若い伴侶をある種のステータスとし、その道具とされる若者も財産狙いで利用されている。であるからして、フェロンは見慣れているのだ。
ちなみにフェロンが知る最大の年の差夫婦は、九〇歳の夫と一五歳の妻だったりするのだから、ふたりの関係を受け入れる程度は朝飯前。
その様子をポカンと眺めていた二人だが、すぐにリルアがカイウスの頭を掴んで強制的に自分の方を向かせる。
掴まれている手の爪が立てられていて何とも痛そうである。
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