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◆ ◆ ◆
それから三ヶ月あまりの月日が流れた。
ギルド『カーネリア』の広い裏庭。そこには井戸があり、自家栽培の畑と小さいながらも花壇がある。
そして、太陽の光に白く輝く大量の洗濯物が風に揺れ、いい香りを運んでくる。
そんな裏庭に響き渡る子供の声と乾いた木がぶつかり合う音色。
「ヘイヘイ! どーしたよ、フェロン!! もうお疲れか?」
木剣を手に、腰を低く落とした茶髪の少年――エト・クユイヒ――が言う。出会った当初、鼻の頭に貼られていた絆創膏も、今では目の下に移動している。
「そっちこそ! 本当はエトがバテてかかってこれないんじゃないの?」
母譲りの黒髪も肩につくほど伸び、この三ヶ月あまりの間で身体も一回り大きくなったように感じる。
朝から昼までリルアに座学と剣術を仕込まれ、昼からはエトとこうして打ち合い、夜は酒場で複数のジョッキを片手に走り回る生活を続けた結果だろう。
「へっ、言うじゃねーか。後悔すんなよっ!?」
「そっちこそっ!!」
今日は座学しかやらせてもらえず溜まった鬱憤を晴らすように、エトの手が振りかぶられる。
攻撃が行われたのはフェロンから見て右側。魔工品の義眼が埋め込まれている側からの攻撃。
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