『カーネリア』

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   少しマズい、と内心で舌打ちする。この義眼は精密に創られており、持ち主の成長速度に応じて義眼も成長してゆく。  しかし、それが最近は少しばかりおかしい。見えにくくなることもあったのだが、逆に見えすぎることもあるのだ。  そして、まさに今が見えすぎる状態。  右目と左目から入ってくる視覚情報が互いに違うせいで脳が別物と判断したのかは不明だが、エトが二人に見える。  左目は駆け寄るエトが、しかし右目はコマ送りのように。時間感覚の狂った二つの映像を見せられたことで、脳の情報処理能力が不調を訴えるように痛み刺激を発生させる。頭痛だ。 「く……っ!?」  木剣が地面に落ちる。  右目を隠すように頭を押さえ、地面に膝をつく。  それに気付いたエトは思いきり振りかぶっていた木剣を慌てて止め、木剣を放り投げてフェロンへ駆け寄る。 「フェロン! おい、大丈夫か!!」 「……こっちは大丈夫、ありがと。でも、あっちが大丈夫じゃないみたい」  その言葉に安堵するエトだが、フェロンの言葉の後半部分に首を傾げようとした時に、 「あああああっ!!」  そんな女の子の声が裏庭に響いた。
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