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背中越しに声を聞いたフェロンは苦笑い。その声の女の子の顔を自分の目で確認できるエトは、もの凄く嫌そうな顔をしていた。
「何で洗濯したばっかりのシーツが地面に落ちてるの!?」
「別にお前が洗濯してるわけじゃねえだろ、ぶきっちょが」
本格的な言い争いに発展しそうな二の句を遮る為に、フェロンは振り返る。
大きな黄色のリボンをつけた亜麻色の髪をボブカットにした背の低い女の子。日射しが強い時期ということもあり、白地のノースリーブシャツ。丈の短い水色のプリーツ。足下は赤いサンダルというラフな格好をしている。
「ごめん、エリー。俺が眩暈を起こしちゃってさ。それをエトが心配してくれたんだよ」
腕を組んで頬を膨らませていた少女、エリー・クロムウェルは、先程までと態度を一転。心配そうにフェロンの傍らに屈む。
「そうだったんだ。それで、もう大丈夫なの?」
「うん、もう平気」
額に手を当てて熱を測ってくれるエリーに大丈夫であるアピールをするように笑顔を向け、それから立ち上がる。
「さて、じゃあ洗濯しなおそうか……って逃げるなよ、エト」
ソロ~っと幽霊のように気配を消して立ち去ろうとしている少年の名を呼ぶ。
ビクッと全身を震えさせ、ぎこちなく向けられた顔は、嫌味なほどの笑顔だった。
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