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「ふっ、そちらは諸君らに任せる。ってか、やってらんねえよっ!!」
「あ、こらっ! 逃げるな!!」
本気のダッシュで逃げていくエトを捕まえられる者は少なく、このカーネリアでも生身の力だけで捕獲可能なのは一人しかいない。
そしてすぐに、
「――ふぎゃっ!!」
しっぽを踏まれた猫の悲鳴のような声が聞こえてきた。
「だから止めたのに」
「行動がワンパターンだから読まれてるんだろうね。今日も最短記録だし」
呆れて苦笑も出ないフェロンとエリーの前に、まさに猫を持ち運ぶように首根っこを掴まれて帰宅を果たしたエトが。
エトを掴んでいるのはリルアである。
「やれやれ。日に日に逃げ足だけが速くなるな。お陰で魔力なしでは捕まえられなくなってきた」
日々、最短記録を樹立する理由を垣間見た気がした。エッフェンベルグ王国最強の七人の中に名を連ねる白光の魔女を見る。
外見だけならば、とても強くは見えない華奢な肢体に、傷痕の一つもない綺麗な肌をしている。
しかし、その外見とは裏腹に幾度となく戦ってきて満足に一撃も攻撃を喰らわせたことがなかった。
それを考えればエトは凄い。まだまだとはいえ、あのリルアに速度だけなら魔術を行使させられる日も近いと言わせたのだから。
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