『カーネリア』

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  (……負けたくない)  密かに拳を握り闘志を燃やしていると、再び小さな頭痛がフェロンを襲う。突然の痛みに思わず「うっ」と呻いてしまう。  隣にいたエリーが、すぐにフェロンの異変に気付き横から身体を支え、その顔を見て驚愕の表情でリルアを見る。 「リルア! フェロンが、フェロンの右目が……!!」  俺の右目が何だろう、と自分のことなのに解らない不安に襲われつつ、しかし、その不安も秒毎に強くなる頭痛ですぐに掻き消される。  しかし、右目に感じる違和。  まるで魔工品の義眼が圧迫されているような感覚。 「フェロン」  リルアの優しい声が耳朶を震わす。彼女の両手がフェロンの頬を挟み、そのまま上を向かせる。  血が流れていた。  魔工品の義眼の埋め込まれた、完全に傷は塞がっているはずの右目から、涙を流すようにツーッと。 「なん、だ……これは?」  初めて見る症状にリルアは戸惑う。しかし、それでもフェロンを抱えて迅速にギルドの二階へ駆け上がり、ノックもなしにドアを蹴破る。 「――ふぉっ!? ぷ、ぷらいべーとたいむだぞっ!?」  慌てて膝と机の間に読んでいた本を隠したカイウスを無視して、リルアが必死の形相で叫ぶ。 「――フェロンを診てやってくれ!!」
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