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「……殺されちゃったんだね」
「ああ。しかも惨殺か……。貴族ってヤツらは気に入らねーけど、俺らと同い年でって部分には同情するぜ」
ふたりの声を隣で聞きながら、しかし、それは遠く離れた場所でされている噂話を耳にしているような、そんな感覚に陥る。
どこか遠い世界の不思議な御伽噺。最後はハッピーエンドか、それともバッドエンドなのか。
「フェロン?」
ぽんっ、と肩に置かれたエトの手の温もりで、本来あるべき喧騒を取り戻す。
「何か変なとこ行ってたような顔してたぜ?」
「……ん、そう? 疲れてるのかも」
苦笑しながらも、すでに世間的に殺されてしまったフェロンの顔色は悪い。
しかし、先程倒れたこともありフェロンの言葉をエトとエリーは疑わない。むしろ、そのことに気付けなかったことを申し訳なさそうにする。
その後、気を使われるように子供用仮眠室に押し込められ、そのままベッドに寝かされる。
「そこで寝とけ」と笑顔で言うエトの心遣いが有り難くて、その言葉に甘えるように静かな部屋で瞼を下ろす。
外から町の人たちの幸せそうな声が聞こえ、その中にあるヴァレンス家と同じ四人家族の明るい声。
「母さん……マリア……」
父さん、と呟こうとして、その声は嗚咽に殺された。
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