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すると、僕の問いに女は口許を上げ、か細く笑みを見せた。
「人間、主は面白いことを訊くのだな」
女はそう言葉を漏らし、声を上げ笑った。女の態度に不快が心を支配する。
「女っ!何が可笑しい。何を思い笑う?」
「嫌、失礼した。別に私は主を馬鹿にしているのでは無い。
ただ、主の問いがあまりにも的外れなものでな。
私に存在の意図を訊いた者など初めてだ」
女はまだ可笑しいのか、口許に手を当て笑みを浮かべていた。
「しかし、笑ってしまった詫びだ。主の問いに答えよう。
私が何故にこの場所に存在するかだが、それは必然。自然の理とでも言おう。
それは主が一番にわかっているはずなのだがな。
……まぁ、それに主が気付けぬのもまた自然の理か」
「存在……必然、理」
僕の中に一つの引っ掛かりが生じた。
「女……、一つ問いたい」
「何だ人間?」
「僕の存在もまた必然か?僕の存在にも意味はあるのか?」
女は薄ら笑みを浮かべた後、手を桜の枝先へとやった。そして、花弁を一つ手に取り、それを宙で手離した。
花弁はヒラリと宙を舞い、僕の頭上に降りた。
「やはり人間、主は面白いことを訊く。
主は二つの必然の交わりを受け、自然の理に殉じ、生を受けたのだ。
また、生に意味を見いだす事。これもまた摂理なのだよ」
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