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「孤独……、孤蝶、君は孤高の蝶なのだ。天高く舞う自由な蝶。
綺麗な名ではないか」
僕は心よりそう思った。孤高、誰も寄せつかせず、自由に自分の意思に飛んでいく。
また名前だけでは無く、孤蝶自身にも僕は憧れのような感情を抱いた。
僕は言わば、鳥籠の鳥だ。
羽ばたく羽は持ちえど、飛ぶ事は為らず、世界は広くも、知る術は無し。
早、二十と五年。僕は鳥籠に守られ、鳥籠に自由を奪われ続けている。
「……僕はね、自由が欲しいんだよ。孤蝶。
何者にも邪魔されず、自由に世界を見てみたいんだよ。
僕にも空を飛ぶ羽があるはずなんだ。でも、その羽も使わなければ、小さく貧弱なままだ。だけれど、僕は一年、また一年と、空だけを眺め続けている。
僕にはもう、……空へ羽ばたける勇気(はね)は無い」
孤蝶に向けられた戯れ言。内心孤蝶の親身な反応を期待する僕は確かにいた。何とも幼稚で安易なのだと、自負している。
ただ、孤蝶は弱い僕の戯れ言にそうかと一言口にし、僕の頬に手を当てただけだった。それ以外に孤蝶の口より慰みの言葉が出ることはなかった。
僕は孤蝶の態度に一瞬身勝手な苛立ちを抱いた。しかし、それ直ぐに沈静化し、僕は孤蝶に敬愛の念を抱いていた。
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