一期一会

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大通りに向かって歩きながら、バス停に行く少し手前の路上で、それから一時間ほど私達は立ち話をしました。そして私は、彼が華々しい経歴を持ち、年老いてその知識や経験が上手く社会に活かせない憤りを感じていること、不治の病の夫人を抱えて看病疲れやストレスをためていたこと、子供はいるけれどもうあまりコミュニケーションもないらしく、近い将来に妻に先立たれ一人になってしまうことへの不安と恐怖を抱えていることなどを知りました。『あなたには、だいぶいろんなことを話してしまいました。』と笑うその老人は、もう郵便局にいた彼とは別の人でした。『私、カウンセラーですから。それより、おじさん今とってもいい笑顔していますよ。』と私も嬉しくなって笑顔で言いました。『有り難う。』そう言うと彼は不意に私の腕を掴み時計を見ると、『あぁ、もうこんなに時間が経っていたのか。…有り難う。おかげでスッキリしました。私はそこのバス停から帰るんです。』私達は、バス停まで歩きました。『こちらこそ、有り難うございました。いつかまた(この街のどこかで)会えるといいですね。』私がそう言うと彼は、『いや、もう会えないよ。一期一会だね!だからあえて自分の名前は名乗らないでおくし、あなたの名前も聞かないよ。』と言いました。『それって、とっても粋ですね!』私は、彼の提案を楽しんだ。こうして私達は、中野駅行きのバス停の前で笑顔で別れました。 一期一会の君、今度あなたに会う時が例えこの星じゃなかったとしても私はまた笑顔であなたに会いたい。カウンセラーの小さなお節介から始まった素敵な出会いに感謝します。
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