プロローグ

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戦勝記念祭――― 100年前、三国があるリセリア半島を凄まじい数の魔獣や魔族、魔人が攻めてきた。その狙いはアルトリア教団が守護している神具『神剣エクセリオン』。創世神より賜わったその剣は世界そのものを滅ぼすことさえ出来るといわれたものであった。 ヒトは神剣を守るために戦った。だが、神剣が安置されているアルトリア教総本山『ディアヌス』が陥落してしまう。 そこでヒトたちは決死の戦を行う。それこそが後に『封魔大戦』と呼ばれるディアヌスに魔族を押し返し、封印した戦いである。後の三英雄である三国の創始者や半島全土の民により奇跡的に封印は成功し魔族との戦いで勝利を勝ち取ったのだ。 その戦勝100年を記念した今年の大祭は、やはり毎年恒例の収穫祭とは、その規模も本質も桁違いだった。 街は数週前、正午に、王国宰相ダリウスの祝辞とともに正式にスタートした。 とはいえ露店なんかは早い店では先月から既に祭の品を並べ愛想を振りまいていたらしいし、準備はもっとそれ以前から行われていたらしい。 初めのうちこそ年に一度の収穫祭と大差ないように思えたらしいが、それはとんでもない大間違いだったらしい。いつまでも途切れる事の無い喧騒が耳を賑やかす。 次々と運び込まれる異国の料理や品々輝きに軽く目を向けながら、ショウは祭を回っていった。 なにもかもが、いつもの比ではなかった。 さらに今晩は、月が天を戴くとき、祭の最後にして、最大の催しといえる、お姫様のお披露目式が予定されている。 今年成人を向かえ、程なく戴冠を行う予定になっている王女様。 先代王と王妃が亡くなって以来、約10年の間、民衆の前には、ほとんど姿を見せたことが無い。 その間、公的な行事はもっぱら王国宰相と大将軍によって取り仕切られてきた。 さぞ美しい姫となっているであろうと、人々の噂が、街や国へと駆けていく。 先代の王妃は長く艶やかな髪が印象的で、どのように豪奢なドレスを着てさえ、見た目が負けるという事は無かったという。 その忘れ形見の姫。 その期待感もまた、人々の、特にこの国の人々の気分を高揚させている大きな要因となっていたのだろう。 ショウは大通りを西方向へと歩いていた。
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