13人が本棚に入れています
本棚に追加
「この五稜郭の中心に在るのは、
復元されたばかりの箱館奉行所でございます。
150年の時を経て、今年復元作業が完了しました。
えー、史実や古写真に基づいて、とても忠実に再現されていて、とくにここ、......」
高校の修学旅行。
それは、私たちの学校は北の大地
北海道『函館』だった。
やはり北の国だから寒いもので。
桜の花は5月の今、咲いている。
だが、もう中旬なので満開を過ぎ
葉桜になりかけ、風が吹くたびに
花弁のカーテンを作っていた。
散り行く桜を見て思う事は一つ。
なんてつまらない説明なんだ。
まず、何を言っているのか分からない。
そして、社会は好きではない。
そんな二大要素を抱えた私は、
ガイドさんの説明をただただ
聞き流すことにした。
そして―――、
「...では、説明も終わったこと
なので自由時間にします。
五稜郭周辺で散策としますが、
時間には集合場所に集まっていてください」
すでにまわりのクラスメイトは、
みんなグループで行動を始めていた。
(まぁ、ひとりでもいっか...)
途中、何人かに誘われていたが、私は断ってしまっていた。
理由は、群れるのが嫌いだからではない。
では何故かと言うと、今は静かに
この土地の空気というか、旅特有の感情に浸ってみたい、そう心に浮かんだからだった。
.
最初のコメントを投稿しよう!