悩みの種

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 教室二つ分は入る四方形の部屋。白いベッドが何個か並べられ、棚には医療薬品や魔法薬が納められている。ここは聖ジョナント学園・医務室。 「はぁ……今日は疲れるわい」  白髪の髪をいじりながら、医務室の先生は机の書類を見ながら溜め息。  近々、学園で健康診断があるのだ。意外に面倒な仕事である。書類に目をやりながら机にあるティーカップを持ちあげた。  ――ここで気付く。  医務室の先生の耳に魔法陣音が聞こえ、ハッとして後ろを慌てて振り向く。 「――こ、これは……転移魔法陣じゃと?!」  医務室の床には、白く輝きを放つ魔法陣が展開されていた。  魔法陣から白い光が天井を貫く勢いで一気に噴き上げる。 「……くっ」  先生は目映い光に対して両手で目を覆い隠す。この光を直視したら失明の危険性を感じたのだ。  魔法陣の光が落ち着き始めるに合わせ、先生は両手を下ろすと……  そこには見たことがある人影がいたので思わず名を叫ぶ。 「――真奈道桜花君じゃと?!」  桜花は杖を前方に構えていたが、すぐに解くと周りを確認するようにキョロキョロと見渡す。それに合わせて淡いピンクの髪も揺れ動いていた。 「……転移成功したみたいだね」 「さすが桜花だよ。それより先生いるわよ!」  転移魔法成功に胸を撫で下ろすが、ホワに言われて、目の前にいる医務の先生に慌て叫ぶ。 「先生ー!! ロカ君、ロカ君を見て下さい!!」 「……ロカ君じゃと……? ――?!」  先生の瞳に映るのは床に倒れている少年。 「こやつは少し前に騒がせた、ルーンの腕輪の保持者じゃな……」  白いワイシャツが裂け真っ赤に染まり、意識無ければ顔色も青白。  ……ひょっとして、死んで……いかん、いかん!! と、そんなことを考えて。 「何があったのじゃ?」  先生は桜花に話をしながらロカの元に駆け寄り、脈拍をとる。 「それが……」  桜花は自分がみた事を簡単に説明を始めた。
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