暗転

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 明らかに陰陽師。それは……自身と同じ陰陽装束であるを見れば、そう考えるのがごく当たり前。  こちらの問いに答える事が無い男は、静かに手を前に出す。その手に……さっきあったはずの勾玉がいつの間にかあった。  ハッ。として自分の手を見れば、先程あった勾玉が消えていた。あるのは、ニナから貰ったペンダントのみ。  その勾玉を懐かしむように眺める男は、切ない表情を一瞬だけ浮かべたあとに、その勾玉を手から落とす。  ――パリン。あっさりと粉々に砕けた勾玉は、光を放ち円陣を作り上げる。  それはロカの足元まで及び光が地面を走り抜けていた。 「――こ、これは??」  何か術を発動させられるのか。そう考えるが、抜ける術を知らず、またここがどこでなんなのか解らないロカは、ただ構える事しか出来ない。  次の瞬間、不思議な光景を目の当たりにする。  暗闇だった周りが、息を吐く間も無く変化を遂げていた。  綺麗な絵が描かれた襖は、立派と言える和室。二十畳あり木彫りの欄間、壁際にある気品ある花瓶や刀を見れば、ここが旧き時代の日本の一室か理解が直ぐ出来た。 「――これは?? あれ? い、いない」  急な変化について行くのがやっとやっとな自分が周りを見渡した時、先程いた男が消え去っていた。  畳からのほのかに香る緑の安らぎに、どこか切なくなる和室が幻などとは思えない。  ……ま、まかさ。  ……また過去に飛ばされた??  直ぐ頭に過り思い付いた思考こそが、再びルーンの腕輪により、時間軸を飛ばされたのかと思えたが……  少なくともルーンの腕輪が発動した感覚は無い。そう考えれば、違う何かが起きている。  いや、それ以前に一緒にいた桜花達はどこに行ってしまったのか? そこまで考え、混乱してしまう自分を落ち着かせようとした時……  静かに襖が開かれた。
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