プロローグ

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─天界。 人間界とは別次元にあり、神や天使等と言った存在が住む世界。 しかし、神の姿を見たものは居ない。 神の居住と呼ばれるヴァルハラにすら、神は居ない。 そこには神の言葉を聞く役目を持つ天使が居るだけである。 そのヴァルハラに、一人の天使が駆け込む。 「ミカエル様!ついに…例の人間が誕生したとは、本当ですか!?」 たくさんの近衛兵が見守る中、謁見の間に慌ただしく声が響く。 「ええ、そのようですね。奴を封印する術式の完成はどのくらいで済むか…今日呼び出したのはその為です」 注文の催促、というには優しい声で、ミカエルと呼ばれた天使は語りかけた。 金色のウェーブがかかった長髪が、整った顔立ちをますます引き立て、天使が少し見惚れている。 しばらくして我に帰って、慌てて報告した。 「あっ、あと1年はかかるかと思います…。」 天使は、申し訳無さそうに顔を床に落としながら答える。 落ち込み気味に俯いた天使を見て、ミカエルは微笑みながら、また優しい口調で天使を宥めた。 「大丈夫ですよ。奴は完全に覚醒するまでに、少なくとも三年はかかるハズですからね。焦る事はありませんよ」 それを聞いた天使は顔を上げ、嬉しそうな表情を浮かべながらミカエルに礼をして謁見の間を後にした。 ミカエルは、ふぅ…と一息ついて、誰に言うわけでもなく呟いた。 「世界の崩壊が始まろうというのに、神は未だ言葉をくださらない…。私はどうするべきなのでしょうか…」 その呟きに、返答の声は無かった…。
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