プロローグ

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─魔界。 ここもまた、人間界とは別次元にあり、悪魔や魔物と言った者達が住む世界。 暗く淀んだ空気、地面からは障気が吹き出し、溶岩の川が流れる。 地獄とも呼ばれるこの世界には、争いが絶えず、悪魔達が支配権を奪い合う。 魔界は力が全てである。 今現在魔界の支配権を持つのは、堕天使ルシフェル。 そして、今日も魔界の支配権を巡り、血にまみれた惨劇とも言える争いが続いている。 そんな中、その争いを傍観する悪魔がいた。 銀色の髪とエメラルドグリーンの瞳、長身。 壁に背中を預け、だらりと腕を下げている。 悪魔と呼ぶには、あまりにも人間に近い容姿のその悪魔は、争う様を見て鼻で笑う。 「…野蛮だな。魔界は力だけで頭悪い奴らばかりだ…くだらない。」 見下した言動を吐き捨てるその口には、ピアスのような装飾品が付けられている。 そんな彼を見て、一人の悪魔が因縁を付ける。 「カイム、力による争いを貶すとは…魔界にいながらどういうつもりだ。」 その悪魔は、二メートルはあろうかという巨体と、山羊の頭をした半獣人とも言える姿だった。カイムと呼ばれた悪魔は、大袈裟に手を広げ、つまらなそうに返した。 「そんなこと言われてもねぇ…?喧嘩はもう飽き飽きだな。馬鹿の一つ覚えみたいに闘い闘いって…」 瞬間、カイムが先程まで立っていた場所に悪魔の豪腕が唸りを上げて壁を撃ち抜いた。 「ならば死ね、目障りだ」 「やれやれ、争う価値もないって気付かないのがおめでたいなぁ」 カイムはケラケラと笑いながら、悪魔の攻撃を交わし、空へ昇り始めた。 そして、見下したような表情を浮かべながら呟いた。 「天界のがよっぽど楽しそうだ。僕はそっちに味方するよ」 空へ昇る姿はやがて見えなくなり、消えていった。
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